#2 劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデン(感想)
おはようございます。
今日は私の最も惹かれるアニメ作品の一つについて書いていきたいと思います。
※1:ヴァイオレット・エヴァーガーデン本編についてのネタバレも含んでいます。
※2:感想は映画に関するネタバレが多めです。
※10/23追記_冒頭10分シーンの分析記事の追加
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劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会
公式ホームページ
映画まで(本編)のあらすじ
架空の地、テルシス大陸にてこの物語は語られる。
大陸の南側では自然資源が豊かであり、北側は資源こそ少ないが技術力があった。
そして南北は貿易を交わすことによりお互い持ちつ持たれつの関係を維持していた。
しかし、南側も北側に負けない技術力を持つようになるとこの関係は崩壊していく。
南側の対等とは呼べない貿易交渉に徐々に不満を募らせた北側の大陸各国は手を組み、南側の大陸へ戦争を仕掛ける。これが4年にも及ぶ南北大陸戦争の始まりであった。
南側の各国を率いるライデンシャフトリヒにて軍人家系の名家「ブーゲンビリア」の長男であるディートフリートは、戦時中にある少女と出会う。
言葉が通じずコミュニケーションがとれない彼女は、その見た目からは考えられぬような業で彼の仲間を全員殺害してしまう。
しかし彼はそこに武器としての価値を見出し、自身を守る道具として弟のギルベルトに押し付ける。
道具として扱われる名もない少女を不憫に思ったギルベルトは、文字や言葉を教え彼女に「ヴァイオレット」という名前を与える。
ギルベルトは4年間、不本意ながらもヴァイオレットと共に戦争に参加し素晴らしい戦果をあげる。
だが、戦争終結の決め手となった「インテンスの戦い」にてヴァイオレットは両腕を失う重症となり、ギルベルトは消息不明の殉職扱いとなってしまう。
またその戦いの最中に致命的な攻撃を受け、瀕死であったギルベルトはヴァイオレットに『心から愛している。』と伝える。
しかし彼女にはその言葉の意味が理解できなかった……。
病院で目を覚ましたヴァイオレットは戦争が終結し南側の勝利だったことを知らされる。
しかしその代償として彼女の両腕は、アダマン銀で出来た義手となってしまう。
自身よりもギルベルトの安否を気にする彼女に、軍でギルベルトの友人であったクラウディア・ホッジンズは安否に関して本当のことは伝えず、ギルベルトの遺言に従いエヴァーガーデン家の養子となるように説得する。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」となった彼女は、ホッジンズの経営するCH郵便社にて、人の気持ちを手紙として代筆する「ドール」という仕事と出会い、ギルベルトの遺した「愛してる。」を理解するために苦難していくのであった。
幾多の手紙で人を結び自身も大きく成長していったヴァイオレットだったが、いまでもいなくなってしまったギルベルトのことが頭から離れずどこか暗い影を落としていた......。
感想
まずなんと言っても、作画が美麗ですね。どのカットをとっても細かく描かれている。
特に今回際立っていたのは水の表現でしたね。水面が出る場面が多かったように思いました。
そして脚本面でも既存のヴァイオレット・エヴァーガーデンを包み彩る台詞や展開が多くなされていたと思います。
ヴァイオレット自室での回想でギルベルトの「愛してる。」の響きとともに、ヴァイオレットのタイピングが止まるシーンがありましたね。そこからまた文字を打ち始めるまで10秒(程度)の無音の間がある。これが一つ前のにぎやかな祭りのシーンと対比されてヴァイオレットの埋められない空虚さを伝えていましたね。
無音のシーンに関しては、ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝でもありました。
また他作品では「リズと青い鳥」は全体的に静かな場面が多かったですね。
画と静けさだけで空間を支配することができるのは京都アニメーションの強みのようにも感じます。
アニメ、原作ファンとしては、開始すぐアンの家が映る時点で察してしまい涙腺が緩みましたね。
くわえてアンが亡くなった描写で本編より少し未来であったことを理解した時に、きちんと人生を全うしたんだなと思って目頭がさらに熱くなり、涙が出てました。
ユリスのシーンは一番印象的でしたね。
まず前提として本編では完成していなかった電波塔と電話の普及(上流階級のみ)があるのですが、その電話がストーリーでドールの敵として描かれつつ、一番大事なところをカバーするという仕事ぶり。なんだこのたまらない脚本。
この劇場版でヴァイオレットはギルベルトと再会しドールをやめてしまいます。
これは原作とは結構違う展開で賛否あると思いますが、個人的にはむしろアニメとして見せるには良かったと考えています。
小説と違い時間の制約があるからこそ、よりドラマティックに、なお簡潔に魅せる必要がありますからね。
本編でヴァイオレットは手紙を代筆し人々の気持ちを結んできたわけですが、劇場版の中ではその余韻を序盤のシーンで多く味わえましたね。
これは本編9話でホッジンズが言う『してきたことは消せない。でも、君が自動手記人形としてやってきたことも消えないんだよ。』という台詞に集約されていると感じています。
同じくホッジンズの台詞で長い戦争が終わったが、皆自分のしてきたことで燃えている、というニュアンスのことも言っていましたから、対比するととてもホッジンズらしい優しさが出ていますね。
そしてなんと言っても劇場版で株を上げたのはディートフリート海軍大佐ですよね。
とても親しみのあるキャラクターに成り下がりました。
(こういう言い方しかできないところが問題なんだ。)
ヴァイオレットを拾い道具として扱った張本人ですが、ギルベルトの唯一の兄でもあり、彼も彼なりにギルベルトのことを思っていたことがよく分かりました。
戦争と軍が絡まなければ、とても美しくスタイルの良い色男ですし、ヴァイオレットが船でよろけたときのフォローシーンなんて思い切り格好良かったです。
ギルベルト帰ってこないんだったら兄でもありなんじゃないの
兄とは対にギルベルトも非常に人間味が溢れていて、違う形で親しみが持てましたね。本編でギルベルトはヴァイオレットを温かく見守ってきた保護者であり、割と力強く描かれていることが多かった分、今回大泣きしたことは彼の燃えていた感情とアイデンティティの解放でもあったのではないでしょうか。
それでも最後にはヴァイオレットを抱き寄せるギルベルトの男らしさは一級品ですね。
最後に
本編と劇場版通して、「今、誰かへ気持ちを伝えることの大切さ」のメインテーマを描くのに手紙という非同期性媒体が用いられていました。それが時代の流れや人間関係といった要素の変化がもたらす登場人物への作用として、ストーリーの中でうまく活きていたなという印象です。
他にもたくさん書きたいことがありますが長くなってしまうので今回はここで止めます。
小言
ギルベルト役の浪川さんの声を聞くと、喧嘩番長2やテイルズを思い出してしまうんですよね。どちらもいい役だったのでなおさら。
物語の最後でデイジーが手紙を書いている場面があるのだけど、その時の字がめちゃくちゃ綺麗なんですよね。デイジーのキャラの造形は結構好みです。
画像出典:
①、④/You Tube_KyoaniChannel『劇場ヴァイオレット・エヴァーガーデン』大ヒット感謝PVより
②/ヴァイオレット・エヴァーガーデン10話より
③/You Tube KyoaniChannnel 『劇場ヴァイオレット・エヴァーガーデン』本予告第2段より