イマフラ

主にオススメの映像作品、本の感想を掲載します。

#8 「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」(感想)

おはようございます。ハカムンです。

 

 今朝、「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」を観てきました。

 

正直にいうと、私は「鬼滅の刃」をほぼ読んだことも観たこともありませんでした。

 

それでもここまで話題になれば情報は入ってくるというものです。

 

 ここ3週間くらいの間、映画館に人が溢れているのを目にしました。

 

コロナ禍の中、ここまで多くの人を動かす作品がどのようなものなのか、興味を持たずにはいられなかったのです。

 

 「鬼滅の刃」を知らなかった私の目線から、この劇場版の感想を語らせていただきます。※1

 

 

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©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
 
公開日: 2020年10月16日 (日本)
監督: 外崎春雄
原作: 鬼滅の刃
原作者: 吾峠呼世晴
音楽: 梶浦由記、 椎名豪

 

 

 

鑑賞前の最低限の知識:

  主人公側は人間、敵は鬼

  妹が鬼化している

  鬼を退治するための組織がある

  鬼を退治するための技がある(呼吸)

 

 ※1:原作、アニメシリーズを観ていないので的はずれな考察かもしれません。ご了承ください。

 

 

 

 

 

 

オープニング

 お館様と呼ばれる人が殉職者の墓地を訪れる

 ↓

竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助は無限列車に飛び乗る

 ↓

三人は炎柱・煉獄杏寿郎と合流する

 

 

 

全体の感想

 まず面白かったか、つまらなかったか、と問われたら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間違いなく面白かったです。

 

この作品、ヒドいことにそれまでのストーリーの説明がほとんどないのです。

なのに見れてしまう。それはなぜだろうか。

 

ずばり、それは豪快なアクションとアニメーションの全振りにあると思ったのです。

 

 

起きて戦え!(アクションシーン)

 弱そうな敵を倒すカットからすでにド派手な技を決め、もっと強力な技で強敵を倒したと思ったら、さらに強敵が出てきて、と猛烈なアクションカットのお祭りでした。

 

基本的に映像の中で、

主人公サイドは右から左へ

鬼サイドは左から右へ

の構図が守られていたので少し複雑なアクションでも見やすかったです。

 

 また技も一辺倒になるのではなく、味方も敵も様々な技を繰り出すので、演出もパターンが変わって飽きは感じないようになってると思いました。

 

特に猗窩座が登場したときに繰り出す技のカメラワークは、それまでの敵のパターンと変わったので新鮮味がありました。

 

列車外の戦闘では、夜の青暗さに煉獄さんの炎の闘気が対比されよく映えているように感じました。

 

 

鬼とは……。

この作品を通して、鬼とは「過去への執着」「自己意識への執着」なのではないかと考察しました。理由は以下です。

 

私の解釈メモ

過去とは変わることのない不変の存在→永遠に限りなく近い存在

自己への肥大化する意識→自分本位、エゴのかたまり

 

 

理由1:「人は人を信じ託す」、「鬼は自身のみを信じる」

 これは「柱」と「十二鬼月」とを対比することで見えてきます。

 

「柱」は人間なので月日が経てば衰え、次の世代へ交代する必要がでてきます。

それゆえ柱(人)は自分より未来を生きる他人のために奮闘することができます。

 

対して「十二鬼月」は鬼なので寿命がありません。なのでメンバーを入れ替えるには基本的に自力でその座を奪い取るしかありません。

 

他人に期待するのではなく、自分を強化することが存在意義になるのです。

 

 

 理由2:『太陽から逃げているんだ』

 これは猗窩座の台詞ですね。

 

「鬼滅の刃」の鬼が日光に弱いことを初めて知りました。

それはさておき……

 

太陽は基本夜明けにやってくるものです。

 

すなわち「明日」、「未来」の始まりだと考えることもできます。

 

個人的には、「太陽から逃げる」という行為は、過去という不変への執着を隠喩しているように思えました。

 

そして猗窩座は煉獄に対して何度も「死ぬな」と警告しています。

 

永遠を生きる鬼にとって、「死」は唯一の変化であり最大の恐怖なのでしょう。

 

 

理由3:「夢の中に居続けたい」

 魘夢によって夢の中へ落とされた炭治郎達。

 

人の夢は過去の体験、記憶に基づいたイメージがほとんどです。

 

それぞれの夢の中は構成は違えど、幸せそうな夢でした。

 

禰豆子の協力もあり眠り続ける危機は免れましたが、襲ってきた子に『俺も夢の中にいたかった』と吐露する炭治郎。

 

しかしその「居続けたい夢の中」というのは自分が幸せだった頃の断片的な記憶にしかすぎません。

つまり自分だけが幸せな空間に身を寄せているのと同義です。

 

そして魘夢は幸せな夢を見続けられるのは幸せだという価値観の持ち主。
とても自分本位な思想に偏っているなと感じました。

 

 

 

上記3つの理由から、「過去の記憶」や、「己の幸福を最優先する行動」に執着することがまさに鬼になることと言えるのではないかと考えたのです。

 

しかし、これらの執着は少なくとも人間なら誰しも持っていると思います。

ある意味、鬼とは人間の「オモテとウラ」「ウラ」に宿る精神そのものではないでしょうか。

 

そうだとすれば私は間違いなく鬼側が出てしまうことが多いな……。

 

 

煉獄杏寿郎から漂う「前後際断」

 仏教の教えに「前後際断」という言葉があります。

 

過去や未来にとらわれることなく現在(いま)を生きることに集中せよ、という意味です。

 

 猗窩座との戦闘で苦戦を強いられた煉獄さんですが、「鬼になれ」と何度言われても、人間の寿命の儚さを美しいと評し、人間である意志をまったくブレることなく貫きました。 

 

残念ながら敗北してしまうのですが、その直前のボロボロの状態でも自分の力の限界を出し切ろうとします。

 

『俺は俺の責務を全うする』

 

 そう心に決めた彼は、自分の命を賭してでも、この場を守り抜くと誓ったのです。

まさに現在に全集中なわけです。

 

「鬼滅の刃」を知らなかった私でも煉獄杏寿郎を好きになっていました。

 

 

 

残念だった点

 ・技や、行動意図、感情の解説が何度も繰り広げられる

→素晴らしいアニメーションがあるのだから過多な説明は少し興ざめする 

 

・ 猗窩座が逃げて終わるのであまりスッキリはしない

 →原作ありきだから仕方ない

 

・「すべからく」の言葉の使い方が違うのでモヤッとする

 →最近世代の誤用の意味で使われていたから台詞の説得力が減ってしまった

 

 

最後に

結論として知らなくても充分楽しめます。おすすめです。

 

エンディングテーマの「炎」にも未来という単語が出てきてるので重要なキーワードなんですかね。

 

私が炭治郎と出会ったら、匂いで「鬼」判定されると勝手に思っています。

 

 

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