イマフラ

主にオススメの映像作品、本の感想を掲載します。

#9 【ドルビーシネマ】ヴァイオレットを観た話【邦画アニメ初】

どうもハカムンです。
本日「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」をドルビーシネマで観ました。

 

ドルビーシネマとは米国企業「DOLBY」のドルビーラボラトリーズが提唱するプレミアムシネマのことです。

 

簡単にいうと、最高の機材・技術最高の劇場最高の映像を提供する映画館ですね。

 

日本では東京、横浜、埼玉、千葉、愛知、京都、大阪、福岡の8館のみです。

そのせいか劇場はとても混んでおりました。

 

そして今回の「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は邦画アニメで初のドルビーシネマなんだとか……。

これはある意味、歴史的瞬間なのでは。

 

 

ドルビーシネマで観た感想

・画面が大きい(がっつり長方形ではなく、少し正方形よりだった)

・青が蒼に、黒がより闇を感じるような色合い

・キャラクターの息遣い、衣擦れがすぐそこにあるような音の定位(位置)

・映像のノイズが減ったせいか、動きがわずかに滑らかに見える

 

……といった感じです。

 

特に色合いに関してはコントラストがより映えるようになっています。

 

ふだん私が足を運ぶ劇場は音響にこだわりがある場所が多いため、映像以外に関してはそこまで差はなかったかなというのが本音です。

 

とはいえ、なかなかドルビーシネマで観る機会もなさそうなので貴重な体験でした。

 

 

小言

 「ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝」は4回

「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」はこれで5回

 

 

観れば観るほど新しいことに気づき、作品愛は深まっていくばかりです。

ドルビーシネマ限定と新来場者特典も無事もらえてよかったです。

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 おまけ画像

 

2,3ヶ月ほど前からキーボードもタイプライター風のを買ってしまいました。。

使い始めは違和感で打ちにくかったですが、青軸の打鍵感と音が好きでわりと重宝しています。

キーボード位置が高いので、個人的にパームレストは必須ですね。

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あつ森でCH郵便社を意識してみた。。


 

#8 「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」(感想)

おはようございます。ハカムンです。

 

 今朝、「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」を観てきました。

 

正直にいうと、私は「鬼滅の刃」をほぼ読んだことも観たこともありませんでした。

 

それでもここまで話題になれば情報は入ってくるというものです。

 

 ここ3週間くらいの間、映画館に人が溢れているのを目にしました。

 

コロナ禍の中、ここまで多くの人を動かす作品がどのようなものなのか、興味を持たずにはいられなかったのです。

 

 「鬼滅の刃」を知らなかった私の目線から、この劇場版の感想を語らせていただきます。※1

 

 

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©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
 
公開日: 2020年10月16日 (日本)
監督: 外崎春雄
原作: 鬼滅の刃
原作者: 吾峠呼世晴
音楽: 梶浦由記、 椎名豪

 

 

 

鑑賞前の最低限の知識:

  主人公側は人間、敵は鬼

  妹が鬼化している

  鬼を退治するための組織がある

  鬼を退治するための技がある(呼吸)

 

 ※1:原作、アニメシリーズを観ていないので的はずれな考察かもしれません。ご了承ください。

 

 

 

 

 

 

オープニング

 お館様と呼ばれる人が殉職者の墓地を訪れる

 ↓

竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助は無限列車に飛び乗る

 ↓

三人は炎柱・煉獄杏寿郎と合流する

 

 

 

全体の感想

 まず面白かったか、つまらなかったか、と問われたら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間違いなく面白かったです。

 

この作品、ヒドいことにそれまでのストーリーの説明がほとんどないのです。

なのに見れてしまう。それはなぜだろうか。

 

ずばり、それは豪快なアクションとアニメーションの全振りにあると思ったのです。

 

 

起きて戦え!(アクションシーン)

 弱そうな敵を倒すカットからすでにド派手な技を決め、もっと強力な技で強敵を倒したと思ったら、さらに強敵が出てきて、と猛烈なアクションカットのお祭りでした。

 

基本的に映像の中で、

主人公サイドは右から左へ

鬼サイドは左から右へ

の構図が守られていたので少し複雑なアクションでも見やすかったです。

 

 また技も一辺倒になるのではなく、味方も敵も様々な技を繰り出すので、演出もパターンが変わって飽きは感じないようになってると思いました。

 

特に猗窩座が登場したときに繰り出す技のカメラワークは、それまでの敵のパターンと変わったので新鮮味がありました。

 

列車外の戦闘では、夜の青暗さに煉獄さんの炎の闘気が対比されよく映えているように感じました。

 

 

鬼とは……。

この作品を通して、鬼とは「過去への執着」「自己意識への執着」なのではないかと考察しました。理由は以下です。

 

私の解釈メモ

過去とは変わることのない不変の存在→永遠に限りなく近い存在

自己への肥大化する意識→自分本位、エゴのかたまり

 

 

理由1:「人は人を信じ託す」、「鬼は自身のみを信じる」

 これは「柱」と「十二鬼月」とを対比することで見えてきます。

 

「柱」は人間なので月日が経てば衰え、次の世代へ交代する必要がでてきます。

それゆえ柱(人)は自分より未来を生きる他人のために奮闘することができます。

 

対して「十二鬼月」は鬼なので寿命がありません。なのでメンバーを入れ替えるには基本的に自力でその座を奪い取るしかありません。

 

他人に期待するのではなく、自分を強化することが存在意義になるのです。

 

 

 理由2:『太陽から逃げているんだ』

 これは猗窩座の台詞ですね。

 

「鬼滅の刃」の鬼が日光に弱いことを初めて知りました。

それはさておき……

 

太陽は基本夜明けにやってくるものです。

 

すなわち「明日」、「未来」の始まりだと考えることもできます。

 

個人的には、「太陽から逃げる」という行為は、過去という不変への執着を隠喩しているように思えました。

 

そして猗窩座は煉獄に対して何度も「死ぬな」と警告しています。

 

永遠を生きる鬼にとって、「死」は唯一の変化であり最大の恐怖なのでしょう。

 

 

理由3:「夢の中に居続けたい」

 魘夢によって夢の中へ落とされた炭治郎達。

 

人の夢は過去の体験、記憶に基づいたイメージがほとんどです。

 

それぞれの夢の中は構成は違えど、幸せそうな夢でした。

 

禰豆子の協力もあり眠り続ける危機は免れましたが、襲ってきた子に『俺も夢の中にいたかった』と吐露する炭治郎。

 

しかしその「居続けたい夢の中」というのは自分が幸せだった頃の断片的な記憶にしかすぎません。

つまり自分だけが幸せな空間に身を寄せているのと同義です。

 

そして魘夢は幸せな夢を見続けられるのは幸せだという価値観の持ち主。
とても自分本位な思想に偏っているなと感じました。

 

 

 

上記3つの理由から、「過去の記憶」や、「己の幸福を最優先する行動」に執着することがまさに鬼になることと言えるのではないかと考えたのです。

 

しかし、これらの執着は少なくとも人間なら誰しも持っていると思います。

ある意味、鬼とは人間の「オモテとウラ」「ウラ」に宿る精神そのものではないでしょうか。

 

そうだとすれば私は間違いなく鬼側が出てしまうことが多いな……。

 

 

煉獄杏寿郎から漂う「前後際断」

 仏教の教えに「前後際断」という言葉があります。

 

過去や未来にとらわれることなく現在(いま)を生きることに集中せよ、という意味です。

 

 猗窩座との戦闘で苦戦を強いられた煉獄さんですが、「鬼になれ」と何度言われても、人間の寿命の儚さを美しいと評し、人間である意志をまったくブレることなく貫きました。 

 

残念ながら敗北してしまうのですが、その直前のボロボロの状態でも自分の力の限界を出し切ろうとします。

 

『俺は俺の責務を全うする』

 

 そう心に決めた彼は、自分の命を賭してでも、この場を守り抜くと誓ったのです。

まさに現在に全集中なわけです。

 

「鬼滅の刃」を知らなかった私でも煉獄杏寿郎を好きになっていました。

 

 

 

残念だった点

 ・技や、行動意図、感情の解説が何度も繰り広げられる

→素晴らしいアニメーションがあるのだから過多な説明は少し興ざめする 

 

・ 猗窩座が逃げて終わるのであまりスッキリはしない

 →原作ありきだから仕方ない

 

・「すべからく」の言葉の使い方が違うのでモヤッとする

 →最近世代の誤用の意味で使われていたから台詞の説得力が減ってしまった

 

 

最後に

結論として知らなくても充分楽しめます。おすすめです。

 

エンディングテーマの「炎」にも未来という単語が出てきてるので重要なキーワードなんですかね。

 

私が炭治郎と出会ったら、匂いで「鬼」判定されると勝手に思っています。

 

 

炎 (期間生産限定盤) (特典なし)

炎 (期間生産限定盤) (特典なし)

  • アーティスト:LiSA
  • 発売日: 2020/10/14
  • メディア: CD
 

 

 

#5 ミッドナイトスワン(感想)

おはようございます。

この頃記事を書くようにしてからますます作品を見る機会が増えてきました。

それぞれしっかり整理していきたいです。

 

今回は小説と映画の両方を観てきたので、その感想を書いていきます。

※微ネタバレあり

 

 

 

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ミッドナイトスワン (文春文庫)

ミッドナイトスワン (文春文庫)

  • 作者:内田 英治
  • 発売日: 2020/07/08
  • メディア: Kindle版
 

 公開日 2020年9月25日

キャスト 監督:内田英治出演:草なぎ剛 服部樹咲 田中俊介 吉村界人 真田怜臣 上野鈴華 佐藤江梨子 平山祐介 根岸季衣 水川あさみ 田口トモロヲ 真飛聖

配給 キノフィルムズ

制作国 日本(2020)

公式サイト https://midnightswan-movie.com/


  

あらすじ

新宿に住むトランスジェンダーの凪沙は、親戚の母親からDVを受けていた一果をしばらくの間引き取ることになる。

 

預かった当初はどうしていいかわからず、突き放していた凪沙だった。
しかし、一果がバレエに興味があることを発端として二人の間に不思議な愛情が生まれていく。

 

 凪沙は気づけば一果を大切な存在として意識し、一果もそれは同じだった。
二人の繊細な愛情は物語の中で大きく揺さぶられていく…...。

 

 

 

感想

最初に小説の方を読んだのですが、主人公がトランスジェンダーであること以外、マエ情報なしで読み始めました。

 

 最近よくあるトランスジェンダー、性差別、DVを問題視した作品ではなかったです。
この物語の中でそれは、「愛を語るための手がかり」にすぎないのでははないかという印象でした。

 

映画のほうでは一果のバレエシーン、優雅に流れる音楽など演出もあったので、美しい愛の物語のように錯覚しそうになります。

 

しかし実際は、自分がなりたいものになれない望んだ生き方も手に入らない、そんな人生に意味とはあるのかを終始問いかけてくる泥臭さがあるように感じました。

 

母になりたい"凪沙"

母親に愛を与えられることなかった"一果"

家族に存在を大切にされていない"りん"

プロになれず若手の夢を育成する"実花"

シングルマザーで非常に不器用ながらもなんとかしようとする"早織"

世間の冷たい扱いにも立ち向かおうとする"スイートピーのメンバー"

 

それぞれのキャラがなにか拠り所にすがっていて、どこか諦観もまとっています。
それゆえ風が吹いたら枝ごと折れそうな生き方なのです。

 

そして小説の方では「希望」を思わせるようなフレーズがよくでてくるのですが、それはまさに拠り所ありき、手放しで明るい未来を抱けるようなものではないです。

 

小説と映画では終わり方が大きく違いました。

 

個人的には小説の終わりのほうが好みでしたが、映画だからこそできる”ズルい”演出も良いと思いました。

 

 

 

小説で印象に残った一果の独白

『あの時、もっと、何も考えずに凪沙の手を取ればよかったと、思い返す時がある。あの時は、何かしたら、そのことが凪沙を傷つけてしまいそうで、何もできなかった。でも、今なら少しわかる。何もしないことこそが、凪沙を傷つけたことを。』

 

 自分の意思で望んだことが叶わないとしても、触れれば壊してしまうかもしれない危険があっても、それでも望んで自らの手を伸ばして向き合わなければいけない。

 

そんな一果の成長のように感じられました。

 

 

最後に

 小説のほうが人物の細部や事情に入り込んでいたため、正直なところ映画は少し飛び飛びな感じがしました。

 

ですが、やはり題材がバレエなこともあって音楽と踊りがもたらす高揚感、脚本との一体感は圧倒的でした。特にラストシーンの演出は胸を打たれます。

 

そして演技面、草彅剛さんはトランスジェンダーを誇張せず自然に演じられていて素晴らしかったです。

 

新人の服部樹咲が演じる一果の目つき、踊り、表情の変化はとても光るものがあります。芯の強い役でしたがあどけなさ、可愛らしさもあります。

 

どちらもおすすめですので、ぜひ一度観てほしい作品です。

 

#2 劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデン(感想)

おはようございます。
今日は私の最も惹かれるアニメ作品の一つについて書いていきたいと思います。
※1:ヴァイオレット・エヴァーガーデン本編についてのネタバレも含んでいます。
※2:感想は映画に関するネタバレが多めです。

 
※10/23追記_冒頭10分シーンの分析記事の追加

upuihicunu-ukgup.hatenadiary.com



 

 

 劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン

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 ©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

 

公式ホームページ

http://violet-evergarden.jp/

 

 

映画まで(本編)のあらすじ

架空の地、テルシス大陸にてこの物語は語られる。

大陸の南側では自然資源が豊かであり、北側は資源こそ少ないが技術力があった。
そして南北は貿易を交わすことによりお互い持ちつ持たれつの関係を維持していた。
しかし、南側も北側に負けない技術力を持つようになるとこの関係は崩壊していく。


南側の対等とは呼べない貿易交渉に徐々に不満を募らせた北側の大陸各国は手を組み、南側の大陸へ戦争を仕掛ける。これが4年にも及ぶ南北大陸戦争の始まりであった。

 

南側の各国を率いるライデンシャフトリヒにて軍人家系の名家「ブーゲンビリア」の長男であるディートフリートは、戦時中にある少女と出会う。


言葉が通じずコミュニケーションがとれない彼女は、その見た目からは考えられぬような業で彼の仲間を全員殺害してしまう。
しかし彼はそこに武器としての価値を見出し、自身を守る道具として弟のギルベルトに押し付ける。


道具として扱われる名もない少女を不憫に思ったギルベルトは、文字や言葉を教え彼女に「ヴァイオレット」という名前を与える。
ギルベルトは4年間、不本意ながらもヴァイオレットと共に戦争に参加し素晴らしい戦果をあげる。


だが、戦争終結の決め手となった「インテンスの戦い」にてヴァイオレットは両腕を失う重症となり、ギルベルトは消息不明の殉職扱いとなってしまう。


またその戦いの最中に致命的な攻撃を受け、瀕死であったギルベルトはヴァイオレットに心から愛している。と伝える。
しかし彼女にはその言葉の意味が理解できなかった……。

 

病院で目を覚ましたヴァイオレットは戦争が終結し南側の勝利だったことを知らされる。
しかしその代償として彼女の両腕は、アダマン銀で出来た義手となってしまう。


自身よりもギルベルトの安否を気にする彼女に、軍でギルベルトの友人であったクラウディア・ホッジンズは安否に関して本当のことは伝えず、ギルベルトの遺言に従いエヴァーガーデン家の養子となるように説得する。


「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」となった彼女は、ホッジンズの経営するCH郵便社にて、人の気持ちを手紙として代筆する「ドール」という仕事と出会い、ギルベルトの遺した「愛してる。」を理解するために苦難していくのであった。

 

幾多の手紙で人を結び自身も大きく成長していったヴァイオレットだったが、いまでもいなくなってしまったギルベルトのことが頭から離れずどこか暗い影を落としていた......。

 

感想

まずなんと言っても、作画が美麗ですね。どのカットをとっても細かく描かれている。
特に今回際立っていたのは水の表現でしたね。水面が出る場面が多かったように思いました。


そして脚本面でも既存のヴァイオレット・エヴァーガーデンを包み彩る台詞や展開が多くなされていたと思います。

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ヴァイオレット自室での回想でギルベルトの「愛してる。」の響きとともに、ヴァイオレットのタイピングが止まるシーンがありましたね。そこからまた文字を打ち始めるまで10秒(程度)の無音の間がある。これが一つ前のにぎやかな祭りのシーンと対比されてヴァイオレットの埋められない空虚さを伝えていましたね。

 

無音のシーンに関しては、ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝でもありました。
また他作品では「リズと青い鳥」は全体的に静かな場面が多かったですね。

 

画と静けさだけで空間を支配することができるのは京都アニメーションの強みのようにも感じます。


アニメ、原作ファンとしては、開始すぐアンの家が映る時点で察してしまい涙腺が緩みましたね。
くわえてアンが亡くなった描写で本編より少し未来であったことを理解した時に、きちんと人生を全うしたんだなと思って目頭がさらに熱くなり、涙が出てました。

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②レッヘルント国アウトーレにあるアンの家

 

ユリスのシーンは一番印象的でしたね。
まず前提として本編では完成していなかった電波塔と電話の普及(上流階級のみ)があるのですが、その電話がストーリーでドールの敵として描かれつつ、一番大事なところをカバーするという仕事ぶり。なんだこのたまらない脚本。

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③ライデンシャフトリヒの電波塔

 

この劇場版でヴァイオレットはギルベルトと再会しドールをやめてしまいます。
これは原作とは結構違う展開で賛否あると思いますが、個人的にはむしろアニメとして見せるには良かったと考えています。


小説と違い時間の制約があるからこそ、よりドラマティックに、なお簡潔に魅せる必要がありますからね。

 

本編でヴァイオレットは手紙を代筆し人々の気持ちを結んできたわけですが、劇場版の中ではその余韻を序盤のシーンで多く味わえましたね。


これは本編9話でホッジンズが言うしてきたことは消せない。でも、君が自動手記人形としてやってきたことも消えないんだよ。という台詞に集約されていると感じています。

 

同じくホッジンズの台詞で長い戦争が終わったが、皆自分のしてきたことで燃えている、というニュアンスのことも言っていましたから、対比するととてもホッジンズらしい優しさが出ていますね。

 

そしてなんと言っても劇場版で株を上げたのはディートフリート海軍大佐ですよね。
とても親しみのあるキャラクターに成り下がりました。
(こういう言い方しかできないところが問題なんだ。)


ヴァイオレットを拾い道具として扱った張本人ですが、ギルベルトの唯一の兄でもあり、彼も彼なりにギルベルトのことを思っていたことがよく分かりました。
戦争と軍が絡まなければ、とても美しくスタイルの良い色男ですし、ヴァイオレットが船でよろけたときのフォローシーンなんて思い切り格好良かったです。
ギルベルト帰ってこないんだったら兄でもありなんじゃないの

 

兄とは対にギルベルトも非常に人間味が溢れていて、違う形で親しみが持てましたね。本編でギルベルトはヴァイオレットを温かく見守ってきた保護者であり、割と力強く描かれていることが多かった分、今回大泣きしたことは彼の燃えていた感情とアイデンティティの解放でもあったのではないでしょうか。


それでも最後にはヴァイオレットを抱き寄せるギルベルトの男らしさは一級品ですね。

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最後に

本編と劇場版通して、「今、誰かへ気持ちを伝えることの大切さ」のメインテーマを描くのに手紙という非同期性媒体が用いられていました。それが時代の流れや人間関係といった要素の変化がもたらす登場人物への作用として、ストーリーの中でうまく活きていたなという印象です。

 

他にもたくさん書きたいことがありますが長くなってしまうので今回はここで止めます。

 

 

 

 

小言

ギルベルト役の浪川さんの声を聞くと、喧嘩番長2やテイルズを思い出してしまうんですよね。どちらもいい役だったのでなおさら。

 

物語の最後でデイジーが手紙を書いている場面があるのだけど、その時の字がめちゃくちゃ綺麗なんですよね。デイジーのキャラの造形は結構好みです。

 

 

画像出典:

①、④/You Tube_KyoaniChannel『劇場ヴァイオレット・エヴァーガーデン』大ヒット感謝PVより

②/ヴァイオレット・エヴァーガーデン10話より

③/You Tube KyoaniChannnel 『劇場ヴァイオレット・エヴァーガーデン』本予告第2段より

#1 ようこそ映画音響の世界へ(感想&紹介)

おはようございます。
今回は先日、とある劇場で観てきた作品の感想を書いていきます。

「ようこそ映画音の世界へ」

 

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もうこのタイトルの響きだけで胸が高鳴ってしまいました。
元々私が音楽と映画に興味があることも強く影響していると思いますが......。
映画館に一人で行くときはできるだけ真ん中の席を選びがちです。

 

簡単に内容を説明しますと、これまでの初期の無音映画から現代のハイテク映画までの歴史の中で、音響にのみスポットを当てて解説されるドキュメンタリー映画です。
数々の有名作品(ジャズ・シンガー、ROMA/ローマ,ジュラシックパーク,スター・ウォーズ等)を例に上げて、音響に詳しくない人でもわかるように丁寧かつ魅力的に語ってくれます。

 

感想

まず一通り観終えた後、自分の映画を観る視点が少し広がったような気がしました。
そしてなぜ今まで作品の音に着目して観ていなかったのだと後悔させられました。
それくらい音の情報量は大きい、映像は画面で表現するが、音は画面外でも表現されているからです。
無論映画を見るときに、サウンドメイクを気にしていないわけではなかったのですが、
登場人物の声音使いや、場面展開ごとにはさまれるBGM、良くてサントラを買って聴き込む程度でした。
今となっては、背景音から映らない映像を想像してみようとも思いますし、なぜこの
タイミングでその音が鳴るのだろうとかも考えてしまいます。
そういうわけで、この作品の中から特に印象に残ったポイントを語っていきます。

 

フォーリーサウンドを作るフォーリーアーティスト

私達が普段聞いている音が映画の中でも同じように効果するかといえば違うのです。
雪を踏む音であれば片栗粉を使用したり、大勢の兵士が一斉に動いたときの鎧の音であればキーケースを振って音を鳴らす。
そんな工夫を凝らすフォーリーアーティストなる人たちが存在します。
また、映画の中では現実には発生しない(聞こえない)音もたくさん鳴っているのです。
例えば、銃を持ったときの音、殴り合いの音、わずかな衣擦れの音もそうです。
それにも関わらず映画となると、違和感を覚えず受け入れ、作品に没入していく。
リアルと映画リアルの垣根が知らず知らずのうちに設けられ、人はそれを軽々と飛び越えています。
特にジュラシック・パークの恐竜の鳴き声はメイキングを知るととても感心させられましたね。トラ、ワニ、ペンギン、犬などの動物の鳴き声をミックスさせたものが、私達の思う、「これぞ恐竜!」なる鳴き声となるのです。
※残念ながら私は本当の恐竜の鳴き声を聞いたことはありません。

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①Photo Chipsより

 

音の繊細さ故に

 音はとても情報量の多いがゆえに、多少の音でもその意味を変えてしまいます。
とある作品のとある家でのシーン、窓際で友人と会話をするのですが、外でヘリコプターの音がうるさく半分程度は聞き取りが困難です。伝わるものも伝わらない。
ならばその雑音を消してしまえば良いのです、映画にはそれが出来るのだから。
その反対に、本来ならば会話相手には聞こえない程度の息遣いも録音することによって
表現することができます。登場人物の音声は観客がその人物の感情を体験する上で非常に欠かせないものです。
こうして作品が意図した音にのみスポットを当てることで、観客が持つ音の情報共有率を高める事ができますね。
そうして積み上げられた音の世界観がストーリーと相まって、私達の心に大きな感動をもたらす働きかけとなるのでしょう。

 

映画館ならではの音響装置

音声同期のない時代の映画では、映像のみ、もしくは上映スクリーンの後ろで実際に楽器を演奏、セリフを喋る人たちがいたのです。
機器の発達により映像=音声付きと刷り込まれている今では考えられないですね。
それどころか音声同期の当初はモノラル音声でしたが、今ではステレオ、サラウンドと
音の豊かさを担う技術が高まっています。
スター・ウォーズの巨大戦艦が自分のすぐ真上を通っているように感じられるのもこのおかげが大きいですね。
サラウンドシステムによって私達はさらに細かく映像のどの辺で音が鳴っているのかを体験できます。
このあたりは映画だけではなく、音楽でも機材のあらゆる方向から独特な音を奏でるアーティストが多くいるので注目すると楽しいですね。
この映画の中で実際に5.1chサラウンドを鳴らしてくれるのですが、音響装置にこだわりを持った映画館なのもあってか心地よかったです。

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 ②パブリックドメインQ:著作権フリー画像素材集より

 

 

 

 

 

最後に

普段何気なく観ていた映画も、「この音がどこから聴こえる?」、「この音はどうやって出しているんだろう。」と疑問を持ちながら観ると、また楽しめそうですね。
音響がもたらした作品の説得力に気づけたときの充足感は大きいです。
公開している映画館は限られますが、本当におすすめの作品です。

 

 

 

 

小言

スター・ウォーズのチューバッカの音声は、長い時間をかけて複数の動物の録音をしたそうですが、本当に執念の末の出来とも言えるような哀愁を感じさせる鳴き声ですね。

世界初のトーキー映画(talking picture)であるジャズ・シンガーの音声録りの工夫はこの映画で見る前に、昔TV番組でもやっていたような気がしていたので再学習になりました。

昔からゲームの足音にはうるさく、作り込まれているゲームは名作であると(勝手に)感じていました。ちょっと前やってたゼルダBoWが歩く場所によって綿密に音が変わることに気づいたときはめちゃくちゃ興奮しましたね。

 最近はゲイリー・ライドストロムのサウンドを聴きにyoutubeに潜ることもしばしばです。

 

 

画像出典:ポスター以外はすべてフリー素材