イマフラ

主にオススメの映像作品、本の感想を掲載します。

#1 ようこそ映画音響の世界へ(感想&紹介)

おはようございます。
今回は先日、とある劇場で観てきた作品の感想を書いていきます。

「ようこそ映画音の世界へ」

 

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もうこのタイトルの響きだけで胸が高鳴ってしまいました。
元々私が音楽と映画に興味があることも強く影響していると思いますが......。
映画館に一人で行くときはできるだけ真ん中の席を選びがちです。

 

簡単に内容を説明しますと、これまでの初期の無音映画から現代のハイテク映画までの歴史の中で、音響にのみスポットを当てて解説されるドキュメンタリー映画です。
数々の有名作品(ジャズ・シンガー、ROMA/ローマ,ジュラシックパーク,スター・ウォーズ等)を例に上げて、音響に詳しくない人でもわかるように丁寧かつ魅力的に語ってくれます。

 

感想

まず一通り観終えた後、自分の映画を観る視点が少し広がったような気がしました。
そしてなぜ今まで作品の音に着目して観ていなかったのだと後悔させられました。
それくらい音の情報量は大きい、映像は画面で表現するが、音は画面外でも表現されているからです。
無論映画を見るときに、サウンドメイクを気にしていないわけではなかったのですが、
登場人物の声音使いや、場面展開ごとにはさまれるBGM、良くてサントラを買って聴き込む程度でした。
今となっては、背景音から映らない映像を想像してみようとも思いますし、なぜこの
タイミングでその音が鳴るのだろうとかも考えてしまいます。
そういうわけで、この作品の中から特に印象に残ったポイントを語っていきます。

 

フォーリーサウンドを作るフォーリーアーティスト

私達が普段聞いている音が映画の中でも同じように効果するかといえば違うのです。
雪を踏む音であれば片栗粉を使用したり、大勢の兵士が一斉に動いたときの鎧の音であればキーケースを振って音を鳴らす。
そんな工夫を凝らすフォーリーアーティストなる人たちが存在します。
また、映画の中では現実には発生しない(聞こえない)音もたくさん鳴っているのです。
例えば、銃を持ったときの音、殴り合いの音、わずかな衣擦れの音もそうです。
それにも関わらず映画となると、違和感を覚えず受け入れ、作品に没入していく。
リアルと映画リアルの垣根が知らず知らずのうちに設けられ、人はそれを軽々と飛び越えています。
特にジュラシック・パークの恐竜の鳴き声はメイキングを知るととても感心させられましたね。トラ、ワニ、ペンギン、犬などの動物の鳴き声をミックスさせたものが、私達の思う、「これぞ恐竜!」なる鳴き声となるのです。
※残念ながら私は本当の恐竜の鳴き声を聞いたことはありません。

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①Photo Chipsより

 

音の繊細さ故に

 音はとても情報量の多いがゆえに、多少の音でもその意味を変えてしまいます。
とある作品のとある家でのシーン、窓際で友人と会話をするのですが、外でヘリコプターの音がうるさく半分程度は聞き取りが困難です。伝わるものも伝わらない。
ならばその雑音を消してしまえば良いのです、映画にはそれが出来るのだから。
その反対に、本来ならば会話相手には聞こえない程度の息遣いも録音することによって
表現することができます。登場人物の音声は観客がその人物の感情を体験する上で非常に欠かせないものです。
こうして作品が意図した音にのみスポットを当てることで、観客が持つ音の情報共有率を高める事ができますね。
そうして積み上げられた音の世界観がストーリーと相まって、私達の心に大きな感動をもたらす働きかけとなるのでしょう。

 

映画館ならではの音響装置

音声同期のない時代の映画では、映像のみ、もしくは上映スクリーンの後ろで実際に楽器を演奏、セリフを喋る人たちがいたのです。
機器の発達により映像=音声付きと刷り込まれている今では考えられないですね。
それどころか音声同期の当初はモノラル音声でしたが、今ではステレオ、サラウンドと
音の豊かさを担う技術が高まっています。
スター・ウォーズの巨大戦艦が自分のすぐ真上を通っているように感じられるのもこのおかげが大きいですね。
サラウンドシステムによって私達はさらに細かく映像のどの辺で音が鳴っているのかを体験できます。
このあたりは映画だけではなく、音楽でも機材のあらゆる方向から独特な音を奏でるアーティストが多くいるので注目すると楽しいですね。
この映画の中で実際に5.1chサラウンドを鳴らしてくれるのですが、音響装置にこだわりを持った映画館なのもあってか心地よかったです。

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 ②パブリックドメインQ:著作権フリー画像素材集より

 

 

 

 

 

最後に

普段何気なく観ていた映画も、「この音がどこから聴こえる?」、「この音はどうやって出しているんだろう。」と疑問を持ちながら観ると、また楽しめそうですね。
音響がもたらした作品の説得力に気づけたときの充足感は大きいです。
公開している映画館は限られますが、本当におすすめの作品です。

 

 

 

 

小言

スター・ウォーズのチューバッカの音声は、長い時間をかけて複数の動物の録音をしたそうですが、本当に執念の末の出来とも言えるような哀愁を感じさせる鳴き声ですね。

世界初のトーキー映画(talking picture)であるジャズ・シンガーの音声録りの工夫はこの映画で見る前に、昔TV番組でもやっていたような気がしていたので再学習になりました。

昔からゲームの足音にはうるさく、作り込まれているゲームは名作であると(勝手に)感じていました。ちょっと前やってたゼルダBoWが歩く場所によって綿密に音が変わることに気づいたときはめちゃくちゃ興奮しましたね。

 最近はゲイリー・ライドストロムのサウンドを聴きにyoutubeに潜ることもしばしばです。

 

 

画像出典:ポスター以外はすべてフリー素材