#5 ミッドナイトスワン(感想)
おはようございます。
この頃記事を書くようにしてからますます作品を見る機会が増えてきました。
それぞれしっかり整理していきたいです。
今回は小説と映画の両方を観てきたので、その感想を書いていきます。
※微ネタバレあり
公開日 2020年9月25日
キャスト 監督:内田英治出演:草なぎ剛 服部樹咲 田中俊介 吉村界人 真田怜臣 上野鈴華 佐藤江梨子 平山祐介 根岸季衣 水川あさみ 田口トモロヲ 真飛聖
配給 キノフィルムズ
制作国 日本(2020)
公式サイト https://midnightswan-movie.com/
あらすじ
新宿に住むトランスジェンダーの凪沙は、親戚の母親からDVを受けていた一果をしばらくの間引き取ることになる。
預かった当初はどうしていいかわからず、突き放していた凪沙だった。
しかし、一果がバレエに興味があることを発端として二人の間に不思議な愛情が生まれていく。
凪沙は気づけば一果を大切な存在として意識し、一果もそれは同じだった。
二人の繊細な愛情は物語の中で大きく揺さぶられていく…...。
感想
最初に小説の方を読んだのですが、主人公がトランスジェンダーであること以外、マエ情報なしで読み始めました。
最近よくあるトランスジェンダー、性差別、DVを問題視した作品ではなかったです。
この物語の中でそれは、「愛を語るための手がかり」にすぎないのでははないかという印象でした。
映画のほうでは一果のバレエシーン、優雅に流れる音楽など演出もあったので、美しい愛の物語のように錯覚しそうになります。
しかし実際は、自分がなりたいものになれない、望んだ生き方も手に入らない、そんな人生に意味とはあるのかを終始問いかけてくる泥臭さがあるように感じました。
母になりたい"凪沙"
母親に愛を与えられることなかった"一果"
家族に存在を大切にされていない"りん"
プロになれず若手の夢を育成する"実花"
シングルマザーで非常に不器用ながらもなんとかしようとする"早織"
世間の冷たい扱いにも立ち向かおうとする"スイートピーのメンバー"
それぞれのキャラがなにか拠り所にすがっていて、どこか諦観もまとっています。
それゆえ風が吹いたら枝ごと折れそうな生き方なのです。
そして小説の方では「希望」を思わせるようなフレーズがよくでてくるのですが、それはまさに拠り所ありき、手放しで明るい未来を抱けるようなものではないです。
小説と映画では終わり方が大きく違いました。
個人的には小説の終わりのほうが好みでしたが、映画だからこそできる”ズルい”演出も良いと思いました。
小説で印象に残った一果の独白
『あの時、もっと、何も考えずに凪沙の手を取ればよかったと、思い返す時がある。あの時は、何かしたら、そのことが凪沙を傷つけてしまいそうで、何もできなかった。でも、今なら少しわかる。何もしないことこそが、凪沙を傷つけたことを。』
自分の意思で望んだことが叶わないとしても、触れれば壊してしまうかもしれない危険があっても、それでも望んで自らの手を伸ばして向き合わなければいけない。
そんな一果の成長のように感じられました。
最後に
小説のほうが人物の細部や事情に入り込んでいたため、正直なところ映画は少し飛び飛びな感じがしました。
ですが、やはり題材がバレエなこともあって音楽と踊りがもたらす高揚感、脚本との一体感は圧倒的でした。特にラストシーンの演出は胸を打たれます。
そして演技面、草彅剛さんはトランスジェンダーを誇張せず自然に演じられていて素晴らしかったです。
新人の服部樹咲が演じる一果の目つき、踊り、表情の変化はとても光るものがあります。芯の強い役でしたがあどけなさ、可愛らしさもあります。
どちらもおすすめですので、ぜひ一度観てほしい作品です。