イマフラ

主にオススメの映像作品、本の感想を掲載します。

#6 クイーンズ・ギャンビット(感想&紹介) 

 Netflixから2020年10月23日より独占配信されたクイーンズ・ギャンビット。

主題はチェスです。

 

私は基本ルールまで(駒の動き方、チェックメイト等)しか理解していないので盤上が示す深い意味まではわかりませんでしたが、ドラマとして非常に楽しめました。
(某囲碁アニメを観ていたときのように)

 

 

チェスが分かる人はより楽しめそうです。

 

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主演:アニャ・テイラー=ジョイ

原作:ウォルター・デヴィス

監督:スコット・フランク

話数:7話(※1リミテッドシリーズ)

 

 

※1:1シーズンのみの制作が決まっていること

※後半ネタバレあり

 

あらすじ

9歳のときに母を失い、孤児院で育てられることになったエリザベス・ハーモン。

 

孤児院の地下室で用務員のおじいさんがチェスをしているのを発見する。

 

それは天賦の才能を持つ彼女と苦楽を共にするチェスとの最初の出会いだった......。

 

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 感想

全体的に各話それぞれ一本映画を観ているような質です。

映像の色味や構成、テンポ感を良くする小刻みな音楽が流れます。

わずか1時間の中に展開が凝縮されています。

 

 

 なんといっても冒頭の映像からキャッチーです。

寝坊したエリザベスが立派なホテルよりチェスを指しに向かうところから始まります。

「どうしてこうなったんだろう?」と続きが気になるオープニングです。

 

 

 

 キャストに関しては個人的に初めて観た人が多かったです。

予告を観て真っ先に主演女優のアニャの姿が美しく目を惹かれてしまいました。

対局中に相手を伺うような表情もたまりません。

 

若い女優さんなので今後の活躍にも期待です。

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チェス=選択

 

もちろんチェス対局のシーンは豊かなカットや演出で、ルールが分からなくてもまったく退屈はしませんでした。

 

 

また、エリザベスに迫る幾度もの人生の選択場面、これはチェスにおいて語られる一手の選択とも同じような意味を持っているのではないかと思います。

 

 

エリザベスは物語の中で攻撃的なチェスプレイが目立つのですが、彼女の人生もまさに攻撃的な、刺激を得るならサクリファイス(犠牲)を厭わないような選択をしていきます。

 

 

そのエリザベスの選択を通してどん底まで落ちたと思ったら、いつのまにか空まで昇ってしまうような勢いあふれる作品になっています。

 

 

 

 

二人の母※微ネタバレ

 この物語の中でエリザベスの実の母と、孤児院から引き取ってくれる母がいます。

 

実の母:

 

原因は不明ですが、精神を病んでおり、エリザベスに対して意味深な言葉を遺しています。

 

エリザベスはその言葉を呪縛のように回想しています。

 

その中でも…

 

『いつかあなたも一人ぼっちになる。』

 

 

チェスプレイヤーとなって大勝利を何度収めても、エリザベスの孤独という呪縛がとかれることはありません。

 

天才だからこその孤独、真の独りになる恐怖をどう克服していくのかも見どころです。

 

 

養子として迎え入れてくれた母:

 

 第一印象はおおらかな母という印象でしたが、実際のところお金になることに目がない性格でユニークな人物です。

 

チェス大会で各地を回る間の母とエリザベスの関係は、親子というより優秀なビジネスパートナーという言い方がしっくりくるかもしれません。

 

ともあれ親として娘のことをきちんと心配しており、チェスのみにひたすら集中してしまうエリザベスに、チェス以外の楽しみ、リラックスすることを教えていて好感が持てます。

 

 

 

 

 最後に

 この作品を観た後チェスのルールを少し勉強し始めました。

 

特に「オープニング」、「エンドゲーム」、「シシリアン・ディフェンス」等の言葉は頻出するので覚えたらもう一度見直してみようと思っています。

 

全話7時間で見れてしまうので、Netflixに加入している方、観ない一手はないと思います。

 

 

 

ちなみにタイトルの「クイーンズ・ギャンビット」はポーンをサクリファイス(犠牲)して、その後の盤面を有利に展開するための定跡の一つらしい……。

 

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https://publicdomainq.net/chess-game-0026681/ より

 

#5 ミッドナイトスワン(感想)

おはようございます。

この頃記事を書くようにしてからますます作品を見る機会が増えてきました。

それぞれしっかり整理していきたいです。

 

今回は小説と映画の両方を観てきたので、その感想を書いていきます。

※微ネタバレあり

 

 

 

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ミッドナイトスワン (文春文庫)

ミッドナイトスワン (文春文庫)

  • 作者:内田 英治
  • 発売日: 2020/07/08
  • メディア: Kindle版
 

 公開日 2020年9月25日

キャスト 監督:内田英治出演:草なぎ剛 服部樹咲 田中俊介 吉村界人 真田怜臣 上野鈴華 佐藤江梨子 平山祐介 根岸季衣 水川あさみ 田口トモロヲ 真飛聖

配給 キノフィルムズ

制作国 日本(2020)

公式サイト https://midnightswan-movie.com/


  

あらすじ

新宿に住むトランスジェンダーの凪沙は、親戚の母親からDVを受けていた一果をしばらくの間引き取ることになる。

 

預かった当初はどうしていいかわからず、突き放していた凪沙だった。
しかし、一果がバレエに興味があることを発端として二人の間に不思議な愛情が生まれていく。

 

 凪沙は気づけば一果を大切な存在として意識し、一果もそれは同じだった。
二人の繊細な愛情は物語の中で大きく揺さぶられていく…...。

 

 

 

感想

最初に小説の方を読んだのですが、主人公がトランスジェンダーであること以外、マエ情報なしで読み始めました。

 

 最近よくあるトランスジェンダー、性差別、DVを問題視した作品ではなかったです。
この物語の中でそれは、「愛を語るための手がかり」にすぎないのでははないかという印象でした。

 

映画のほうでは一果のバレエシーン、優雅に流れる音楽など演出もあったので、美しい愛の物語のように錯覚しそうになります。

 

しかし実際は、自分がなりたいものになれない望んだ生き方も手に入らない、そんな人生に意味とはあるのかを終始問いかけてくる泥臭さがあるように感じました。

 

母になりたい"凪沙"

母親に愛を与えられることなかった"一果"

家族に存在を大切にされていない"りん"

プロになれず若手の夢を育成する"実花"

シングルマザーで非常に不器用ながらもなんとかしようとする"早織"

世間の冷たい扱いにも立ち向かおうとする"スイートピーのメンバー"

 

それぞれのキャラがなにか拠り所にすがっていて、どこか諦観もまとっています。
それゆえ風が吹いたら枝ごと折れそうな生き方なのです。

 

そして小説の方では「希望」を思わせるようなフレーズがよくでてくるのですが、それはまさに拠り所ありき、手放しで明るい未来を抱けるようなものではないです。

 

小説と映画では終わり方が大きく違いました。

 

個人的には小説の終わりのほうが好みでしたが、映画だからこそできる”ズルい”演出も良いと思いました。

 

 

 

小説で印象に残った一果の独白

『あの時、もっと、何も考えずに凪沙の手を取ればよかったと、思い返す時がある。あの時は、何かしたら、そのことが凪沙を傷つけてしまいそうで、何もできなかった。でも、今なら少しわかる。何もしないことこそが、凪沙を傷つけたことを。』

 

 自分の意思で望んだことが叶わないとしても、触れれば壊してしまうかもしれない危険があっても、それでも望んで自らの手を伸ばして向き合わなければいけない。

 

そんな一果の成長のように感じられました。

 

 

最後に

 小説のほうが人物の細部や事情に入り込んでいたため、正直なところ映画は少し飛び飛びな感じがしました。

 

ですが、やはり題材がバレエなこともあって音楽と踊りがもたらす高揚感、脚本との一体感は圧倒的でした。特にラストシーンの演出は胸を打たれます。

 

そして演技面、草彅剛さんはトランスジェンダーを誇張せず自然に演じられていて素晴らしかったです。

 

新人の服部樹咲が演じる一果の目つき、踊り、表情の変化はとても光るものがあります。芯の強い役でしたがあどけなさ、可愛らしさもあります。

 

どちらもおすすめですので、ぜひ一度観てほしい作品です。

 

#4 クジラの子らは砂上に歌う(感想&紹介)

おはようございます。今回は2年前に読んだとある漫画の感想と紹介です。
少し風変わりな世界観に惹き込まれます。
※ネタバレはありません。

 

 

クジラの子らは砂上に歌う

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 © 梅田阿比(月刊ミステリーボニータ)/「クジラの子らは砂上に歌う」製作委員会

 

 

クジラの子らは砂上に歌う 1 (ボニータ・コミックス)
 

 

 

Netflixでアニメを見返して久しぶりに読みたくなりました。

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簡単な紹介

 泥クジラと呼ばれる砂上に浮かぶ船があった。

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主人公のチャクロたちはこの泥クジラという船のような島で生活しています。
島では子供から大人までが500人程度。

 

 ここで生活する民は、感情を源とする超能力「情念動(サイミア)」を持つ印(シルシ)と、能力を持たない無印(ムイン)がいます。

 

また、印は能力はあるが短命で無印は能力こそないが長生きという特徴があります。
泥クジラでは民の能力や、寿命を考慮した仕事の分配がなされています。


主人公チャクロは印ですがサイミアを上手く扱えていないので、泥クジラで記録係に任命されています。人の死やこの砂上で起こったあらゆることを記録する仕事です。
物語はそんなチャクロの記録を語りとして進行します。

 

砂上では半年に一回くらい流れ島がやってきます。民にとって食料や資源を確保する機会になります。
ある日、いつもとは一風違う流れ島がやってくるところから物語は動き出します。

 

感想

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以前購入した10巻まで

とにかく設定が面白いです。泥クジラでは感情に関しての独特なルールがあったり、砂上ゆえの文化があったりします。
それでもどこか私達と同じような観念が渦巻いてもいます。

 

特におすすめしたいポイントを紹介していきます。

 

泥クジラの正体

この島では、無印の最年長集団である長老会のみが泥クジラの正体を知っています。
島の中には、この泥クジラだけの狭い生活に対して疑問を持ち、長老会に反発するものも少なくはありません。

 

彼らは泥クジラの外に、自分たちの見たことのない世界が広がっているはずだと信じています。物語が進んでいく中で様々な事実が発覚し、幾度も島全体が動揺につつまれます。

 

王道な展開ですが、世界が砂上で構成されているため個人的には新鮮に感じます。


葬儀で泣いてはいけない

 亡くなった人は砂に流し見送るしきたりがあります。
その葬儀中に泣いてしまうと、砂に眠るたくさんの魂に呼ばれて自身の寿命が減ると信じられているようです。

また印が短命なこともあって、寿命で亡くなることが珍しくないため、そのたびに悲しんでいたら身がもたないという理由もありそうです。

 

それでも感情が抑えきれなくなったときは、両手を握って爪を立てて我慢するのです。
なんとも素朴な行為ですね。

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情念動(サイミア)

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この青く光っている印のようなものがサイミアです。
感情で発動すること以外は私達の想像する超能力にかなり近いですね。
物体を自由自在にコントロールできます。
用途によっては人を助ける力にもなるし、破壊者にもなれるところがミソですね。

 

最後に

 世界観は異色ですが、ひとくせある感情描写が豊かなのでなぜか登場人物に共感できてしまう魅力があります。

漫画はまだ続いていますね。アニメの二期も密かに期待しているのですが......。

私は現在11巻から17巻まで電子版で読み途中です。

 

 

小言

アニメ版のチャクロの声優さんは今鬼滅で大人気の花江夏樹さんですね。

この漫画の着想は作者の梅田阿比さんによると、古い路地にある怪しいお店で手に入れた外国人の日記から得ているらしいです。

 

 

画像出典:

①、②、③/アニメ 『クジラの子らは砂上に歌う』 第一話より

 

 

#3 ブレイクタイム

おはようございます。
今日は感想ではなく、この頃の鉛のような空気に対して感じたことを少しだけ。

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足をとめて、下を眺めたら

よく世間では、「自分より上を見ろ」、もしくは「人と比べるな」と言いますね。
確かに自分を成長させるには自分よりも先にいる人を目標にするのが一番です。
人より自己との対比で成長しろというのもよく分かります。 
でも、それでモチベーションを高く保ち続けるのは難しいのではないでしょうか。

現に周りを見ていて、やたら自分に厳しくしてしまう人がいる。
でもそういう人に限って、傍から見てよく仕事のできる人だったりしますね。
厳しいからできる人なのか、元々の性格なのかどうかはニワトリと卵の話になってしまいますが。

 

 自分が立っている場所が基準だと思ってしまって、そこから逸れたり、落ちたりすることにいささか過敏になっているのではないかと考えています。

 

一度歩みを止めて(あなたの目線で)自分より下を眺めてみてもよいのではないでしょうか。
そうすると案外そこにいる人が幸せそうに暮らしているかもしれません。

 

あの人が笑えてるんだから、自分はまだまだ大丈夫だなという気分になれれば上々です。
性格悪いなと思われるかもしれません。捻くれた感性の賜物かもしれません。
こんなこと書いている自分も優れた人間ではないので、あなたの限りなく下に位置する気がしてますが......。

 

ですがひどく落ち込んだ時に心のつっかえ棒になってくれる人って、そういう人だったりするんですよね。現に本人は自分より明るい雰囲気をまとっていますからね。

 

 本来誰とも比較しないことが理想ではありますが、人は相対的に価値をはかろうとする生き物です。仏教でも、他人と比べる心を消すのは悟りの境地までいかないと消えることはないだろうと説いています。

 

心理学者のアドラーにいたっては、比較を肯定的に捉えて上手く使えば絶大な力になると教えています。

 

深呼吸をして、自分と他者との比較の癖を見直してみるのもよいかもしれません。
道具や手段は使い方次第で、縄にもナイフにもなると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

#2 劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデン(感想)

おはようございます。
今日は私の最も惹かれるアニメ作品の一つについて書いていきたいと思います。
※1:ヴァイオレット・エヴァーガーデン本編についてのネタバレも含んでいます。
※2:感想は映画に関するネタバレが多めです。

 
※10/23追記_冒頭10分シーンの分析記事の追加

upuihicunu-ukgup.hatenadiary.com



 

 

 劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン

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 ©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

 

公式ホームページ

http://violet-evergarden.jp/

 

 

映画まで(本編)のあらすじ

架空の地、テルシス大陸にてこの物語は語られる。

大陸の南側では自然資源が豊かであり、北側は資源こそ少ないが技術力があった。
そして南北は貿易を交わすことによりお互い持ちつ持たれつの関係を維持していた。
しかし、南側も北側に負けない技術力を持つようになるとこの関係は崩壊していく。


南側の対等とは呼べない貿易交渉に徐々に不満を募らせた北側の大陸各国は手を組み、南側の大陸へ戦争を仕掛ける。これが4年にも及ぶ南北大陸戦争の始まりであった。

 

南側の各国を率いるライデンシャフトリヒにて軍人家系の名家「ブーゲンビリア」の長男であるディートフリートは、戦時中にある少女と出会う。


言葉が通じずコミュニケーションがとれない彼女は、その見た目からは考えられぬような業で彼の仲間を全員殺害してしまう。
しかし彼はそこに武器としての価値を見出し、自身を守る道具として弟のギルベルトに押し付ける。


道具として扱われる名もない少女を不憫に思ったギルベルトは、文字や言葉を教え彼女に「ヴァイオレット」という名前を与える。
ギルベルトは4年間、不本意ながらもヴァイオレットと共に戦争に参加し素晴らしい戦果をあげる。


だが、戦争終結の決め手となった「インテンスの戦い」にてヴァイオレットは両腕を失う重症となり、ギルベルトは消息不明の殉職扱いとなってしまう。


またその戦いの最中に致命的な攻撃を受け、瀕死であったギルベルトはヴァイオレットに心から愛している。と伝える。
しかし彼女にはその言葉の意味が理解できなかった……。

 

病院で目を覚ましたヴァイオレットは戦争が終結し南側の勝利だったことを知らされる。
しかしその代償として彼女の両腕は、アダマン銀で出来た義手となってしまう。


自身よりもギルベルトの安否を気にする彼女に、軍でギルベルトの友人であったクラウディア・ホッジンズは安否に関して本当のことは伝えず、ギルベルトの遺言に従いエヴァーガーデン家の養子となるように説得する。


「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」となった彼女は、ホッジンズの経営するCH郵便社にて、人の気持ちを手紙として代筆する「ドール」という仕事と出会い、ギルベルトの遺した「愛してる。」を理解するために苦難していくのであった。

 

幾多の手紙で人を結び自身も大きく成長していったヴァイオレットだったが、いまでもいなくなってしまったギルベルトのことが頭から離れずどこか暗い影を落としていた......。

 

感想

まずなんと言っても、作画が美麗ですね。どのカットをとっても細かく描かれている。
特に今回際立っていたのは水の表現でしたね。水面が出る場面が多かったように思いました。


そして脚本面でも既存のヴァイオレット・エヴァーガーデンを包み彩る台詞や展開が多くなされていたと思います。

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ヴァイオレット自室での回想でギルベルトの「愛してる。」の響きとともに、ヴァイオレットのタイピングが止まるシーンがありましたね。そこからまた文字を打ち始めるまで10秒(程度)の無音の間がある。これが一つ前のにぎやかな祭りのシーンと対比されてヴァイオレットの埋められない空虚さを伝えていましたね。

 

無音のシーンに関しては、ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝でもありました。
また他作品では「リズと青い鳥」は全体的に静かな場面が多かったですね。

 

画と静けさだけで空間を支配することができるのは京都アニメーションの強みのようにも感じます。


アニメ、原作ファンとしては、開始すぐアンの家が映る時点で察してしまい涙腺が緩みましたね。
くわえてアンが亡くなった描写で本編より少し未来であったことを理解した時に、きちんと人生を全うしたんだなと思って目頭がさらに熱くなり、涙が出てました。

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②レッヘルント国アウトーレにあるアンの家

 

ユリスのシーンは一番印象的でしたね。
まず前提として本編では完成していなかった電波塔と電話の普及(上流階級のみ)があるのですが、その電話がストーリーでドールの敵として描かれつつ、一番大事なところをカバーするという仕事ぶり。なんだこのたまらない脚本。

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③ライデンシャフトリヒの電波塔

 

この劇場版でヴァイオレットはギルベルトと再会しドールをやめてしまいます。
これは原作とは結構違う展開で賛否あると思いますが、個人的にはむしろアニメとして見せるには良かったと考えています。


小説と違い時間の制約があるからこそ、よりドラマティックに、なお簡潔に魅せる必要がありますからね。

 

本編でヴァイオレットは手紙を代筆し人々の気持ちを結んできたわけですが、劇場版の中ではその余韻を序盤のシーンで多く味わえましたね。


これは本編9話でホッジンズが言うしてきたことは消せない。でも、君が自動手記人形としてやってきたことも消えないんだよ。という台詞に集約されていると感じています。

 

同じくホッジンズの台詞で長い戦争が終わったが、皆自分のしてきたことで燃えている、というニュアンスのことも言っていましたから、対比するととてもホッジンズらしい優しさが出ていますね。

 

そしてなんと言っても劇場版で株を上げたのはディートフリート海軍大佐ですよね。
とても親しみのあるキャラクターに成り下がりました。
(こういう言い方しかできないところが問題なんだ。)


ヴァイオレットを拾い道具として扱った張本人ですが、ギルベルトの唯一の兄でもあり、彼も彼なりにギルベルトのことを思っていたことがよく分かりました。
戦争と軍が絡まなければ、とても美しくスタイルの良い色男ですし、ヴァイオレットが船でよろけたときのフォローシーンなんて思い切り格好良かったです。
ギルベルト帰ってこないんだったら兄でもありなんじゃないの

 

兄とは対にギルベルトも非常に人間味が溢れていて、違う形で親しみが持てましたね。本編でギルベルトはヴァイオレットを温かく見守ってきた保護者であり、割と力強く描かれていることが多かった分、今回大泣きしたことは彼の燃えていた感情とアイデンティティの解放でもあったのではないでしょうか。


それでも最後にはヴァイオレットを抱き寄せるギルベルトの男らしさは一級品ですね。

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最後に

本編と劇場版通して、「今、誰かへ気持ちを伝えることの大切さ」のメインテーマを描くのに手紙という非同期性媒体が用いられていました。それが時代の流れや人間関係といった要素の変化がもたらす登場人物への作用として、ストーリーの中でうまく活きていたなという印象です。

 

他にもたくさん書きたいことがありますが長くなってしまうので今回はここで止めます。

 

 

 

 

小言

ギルベルト役の浪川さんの声を聞くと、喧嘩番長2やテイルズを思い出してしまうんですよね。どちらもいい役だったのでなおさら。

 

物語の最後でデイジーが手紙を書いている場面があるのだけど、その時の字がめちゃくちゃ綺麗なんですよね。デイジーのキャラの造形は結構好みです。

 

 

画像出典:

①、④/You Tube_KyoaniChannel『劇場ヴァイオレット・エヴァーガーデン』大ヒット感謝PVより

②/ヴァイオレット・エヴァーガーデン10話より

③/You Tube KyoaniChannnel 『劇場ヴァイオレット・エヴァーガーデン』本予告第2段より